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クオリティ・バイ・デザインで高品質な医薬品を世界へ イタリアPROCOS社のR&D戦略

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クオリティ・バイ・デザインで高品質な医薬品を世界へ イタリアPROCOS社のR&D戦略
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    皆さんは、「CDMO(医薬品受託製造開発機関)」という言葉をご存知でしょうか。
    CDMOとは、製薬会社からの依頼を受け、医薬品の製造や開発を受託する企業のこと。日々進化する医療の現場において、新しい薬を早く、そして安全に患者さんの元へ届けるために、製薬会社を陰で支える重要なパートナーとして欠かせない存在となっています。

    クライアントに求められるCDMOの条件とは、ただ最新の設備や巨大な工場を持っていることだけではありません。イタリア北部の都市、カメリに拠点を置くPROCOS S.p.A.(以下、PROCOS)は、80年以上の歴史を持ち、現在はCBCグループとしてグローバルに事業を展開しています。
    原薬(API)および高活性原薬(HPAPI)の開発から製造までを専門とする同社は、なぜ世界中の製薬業界から厚い信頼を寄せられているのでしょうか。今回は、未来の医療を支えるPROCOS社の取り組みと、その中核を担う同社のR&D(研究開発)の取り組みを紹介します。

     

    PROCOSの基盤と「顧客の成功は自社の成功」の企業文化

    1945年に設立されたPROCOSは、長年にわたる継続的な投資によって成長を続けてきました。現在では15万5,000平方メートルの広大な敷地に50以上の生産ラインを有し、反応器の総容量は630立方メートルに達します。
    しかし、同社が「自らの最大の特徴」と捉えているのは、こういった事業規模ではなく、その「企業文化」にあるといいます。

    _DSC7150 研究者、エンジニア、品質管理担当者、現場のオペレーターに至るまで、PROCOSのすべての従業員は「自分の仕事が、より大きな目的に貢献している」という共通の意識を胸に日々の業務に向き合っています。
    チームが成功すれば組織全体が恩恵を受け、会社が成長すればその成果を皆で分かち合う。この世代を超えて受け継がれてきた「共通の目的意識」こそが、PROCOSの品質を支える揺るぎない基盤となっています。

    このような企業文化は、研究開発の最前線である同社のR&Dチームにも影響を与えています。PROCOSのR&D事業の原則である「お客様の成功と自社の成功は一体である」というポリシーに基づいて、すべての開発プロジェクトは、単なる受託業務ではなく「お客様との共同作業」として進められるのだとか。
    また同社のR&Dディレクターであるヤコポ・ロレット氏は、自身の理想の組織像として「高度な科学的専門知識」と「結果へのこだわり」「活発な議論」「協調性」、そして「サービス向上への真摯な姿勢」を掲げています。

    これを体現するのが、60名の研究者からなる強力なR&Dチームです。そのうち15名以上が博士号や博士研究員資格を持つ有機合成の専門家であり、イタリアの一流大学で学び、海外での経験を積んだ優秀な人材が集まっています。
    さらに大きな特徴が、人材の「若さ」。約80%が35歳未満の若いメンバーによるアイデアに満ちた活気と、数十年の経験を持つベテラン研究者の的確な指導とディレクションが、同社の強みを下支えしています。若き才能と豊富な経験のコラボレーションが、PROCOSのR&D組織の最大の武器となっているのです。

    品質を造り込む「クオリティ・バイ・デザイン」の思想

    PROCOSの品質に向けたアプローチの中でもひときわ特徴的なのが、同社の根底にある「Quality by Design(QbD)」の思想です。
    「Quality by Design」とは、品質を後から確認するのではなく、「製品設計(Design)の段階から品質(Quality)を造り込む」姿勢から名付けられた、現代の医薬品開発を代表する思想と手法です。PROCOSでは、QbDを単なる規制対応ではなく、より高いレベルで安定した品質を保証するための、「研究開発活動の基盤」として捉えているのです。

    このアプローチを支えるため、PROCOSは100万ユーロ超を投じて、ロボット自動化プラットフォーム「CHEMSPEED」を導入しました。
    このプラットフォームによりハイスループット実験(膨大な組み合わせの反応条件を試して、早く、かつ大量にデータを得る実験のこと)が可能となり、研究者は短期間で広範なデザインスペースを探索できるように。開発期間の大幅な短縮や、より堅牢な製造プロセスの構築、より充実した規制当局向け申請書類の作成を可能にしました。

    画像② そして、このような最先端の技術で確立されたプロセスを、実際の製造ラインへとスケールアップする技術移転は、医薬品開発において最もクリティカルなフェーズのひとつだと言われています。製造工程の複雑さや原材料の取り扱い、使用する設備の違いが医薬品の品質に影響する場合も少なくありません。
    ここで力を発揮するのが、PROCOSが誇るチームワークです。同社では、プロセスを開発した研究者が技術移転にも継続して立ち会い、製造現場や品質・安全管理の各部門と緊密に連携します。

    そしてお客様にあたる製薬会社にも常に状況を共有し、課題があれば即座に解決策を提示。単なる「委託先と発注元」という枠を超え、真のパートナーとしての信頼関係を築いているのです。
    社内では、プロジェクトの枠を超えて研究者同士で知識を共有し、経験豊富なベテランが若手へ熱心に技術と組織の価値観を伝承していく。そして、個人の貢献がチーム全体の成果を最大化していく。こういったPROCOSの協働モデルは、日本の職業文化に根付く価値観と強く共鳴するものです。

    PROCOSは、イタリア企業でありながら日本のCBCグループと価値観をシェアしており、これもお客様となる日系製薬会社にとって大きな安心感につながるでしょう。

    世界最先端の「HPAPI施設」による世界基準の信頼

    近年のPROCOSは巨額の投資を行って、最新の技術を用いたさらなる品質の向上に取り組んでいます。中でも2018年以降に拡大を続けているのが、「HPAPI(高活性原薬)」の専用施設です。
    がん治療薬や薬物抗体複合体(ADC)などに使われるHPAPIは、ごく微量でも、人体に対して強い影響がある医薬品成分です。これは、病気には有効である一方で、製造する現場のスタッフにとっては、目に見えないその粉末をわずかでも吸い込んだり触れたりしてしまえば、健康に重大な被害を及ぼしかねない非常に危険な物質でもあります。
    そのため、HPAPIの製造においては、作業者の命と周辺環境を絶対に守り抜くための「封じ込め」が、最も重要な課題のひとつとなります。

    PROCOSのHPAPI施設は、この封じ込め技術において世界最先端の設備を備えており、暴露限界を「1立方メートルあたり1ナノグラム」という極めて低いレベルまで管理できる技術を採用しています。これは単なるオーバースペックな設備投資ではなく、現場で働くスタッフの健康と安全、そして地域の環境を何があっても守り抜くという、PROCOSの強い責任感の表れなのです。

    その他にも、高圧クロマトグラフィー、ナノろ過、凍結乾燥、粉砕などの特殊な技術を有する4つのcGMP認証製造ユニットにより、細胞毒性を有する抗がん剤や抗体薬物複合体(ADC)のペイロードなど、複雑な化合物の開発と製造が可能となっています。

    さらに、PROCOSの製造品質に対する信頼は、すでにグローバルな規模で確固たるものになっています。同社の施設は、アメリカのFDA(食品医薬品局)や日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)、イタリアのAIFA、欧州医薬品庁(EMA)、カナダ保健省など、世界有数の厳格な規制当局による数々の査察をクリアしてきました。
    このように多地域にわたる厳しい審査をクリアしている実績は、新薬の承認を目指す製薬会社にとってより大きな安心材料となるはずです。

    研究開発部門の拡張でより良い医薬品を世界に届ける

    こうした現在の圧倒的な実績にとどまることなく、医療の未来を見据え、PROCOSは現在も進化を続けています。
    いま製薬業界では、合成ペプチドやオリゴヌクレオチド(核酸医薬品)をはじめとした「TIDES(タイズ)」と総称される、次世代の治療法への期待が急速に高まっています。PROCOSはこうした業界のニーズを先取りし、新しい治療手段の研究から製造までをサポートするインフラの開発に、積極的に取り組んでいます。
    その未来への挑戦を象徴する大きな節目が、2028年に完成予定となっているR&Dセンターの建設です。この新施設の誕生により、同社のR&D部門を支える研究者は約100名体制へ、研究開発能力が飛躍的に高まる見込みです。

    ますます複雑化する分子構造や新たな治療法の開発に対して、製薬会社により高度な科学的能力を提供し、開発期間の大幅な短縮と幅広い専門知識へのアクセスをもたらすことが、新たなR&Dセンターには期待されています。そして、こうしたPROCOSの最先端の取り組みは、遠く離れた日本の製薬業界とも深く結びついています。
    日本のCBCグループの完全子会社であるPROCOSは、日本の親会社と共通の企業理念や、中長期的な戦略目標を共有しています。品質に対する高い要求や精度、継続的な改善への真摯な姿勢など、日本の職業文化に根ざした価値観のもとで、単なる「CDMOへの業務委託」に留まらない価値提供と、日本パートナー企業との関係強化に取り組んでいます。
    PROCOSの高度な研究開発、巨額の設備投資、そしてお客様との透明性の高い協力関係は、すべて「患者へ、より良い医薬品を提供する」ことに繋がります。イタリア・カメリの工場から送り出される原薬は、今この瞬間も、世界中で重篤な疾患や命の危機に直面している人々の治療を支える希望となっています。

    PROCOSは単なる化学物質の製造会社ではありません。科学と技術、絶え間ないイノベーション、そして従業員一人ひとりの情熱によって、安全で高品質な医薬品の「土台」を創り上げる組織です。
    継続的な投資と拡大し続ける科学的能力、そして明確な長期ビジョンを胸に同社が歩む物語の先には、人々の命を救うための最も重要なエピソードが、これからも書き加えられていくことでしょう。

    編集=伊藤 駿(ノオト)

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